江戸の夜に賑わう
宴会場『宵御殿』。
宵御殿には広く名の知れた
“華”が二人いた。
一人は「輝夜」。
名前の通りの美しい
夜色の髪を持つ少女。
一人は「佳月」。
名前の通り、月のような
輝く瞳を持つ少年。
これは宵御殿のトップを
目指す二人の、
長い戦いの記録である。
物語
宵御殿細見
輝夜(かぐや)
♀/19歳
宵御殿の“華”の1人。
その屈託のなさと愛嬌で人気の遊女。
宵御殿の仲間を家族のように思っており、調和を大事にする。
佳月とは十年来の親友で、きょうだいのような関係。
時折、妙に情緒に疎いところがある。
「大丈夫、きっとみんなあなたを好きになるよ」
佳月(かげつ)
♂/19歳
宵御殿の“華”の1人。
異国風の派手な容姿で人気の陰間。
誰に対しても態度がきつく、壁を作りやすい。しかし唯一輝夜とだけは親しく付き合っている。
実のところ情が深く、一度打ち解けると面倒見がいい性格。
「僕に構ったってろくなことはないぞ」
風見(かざみ)
♀/二十代
かつての宵御殿の“華”。
今では前線を退き、姉女郎として輝夜と佳月の面倒をよく見ている。
おおらかで細かいことを気にしない性格。金遣いが宵御殿で一番荒い。
吉野には思う所があるらしい。
「あんたもあたしの妹みたいなものよ」
吉野(よしの)
♂/二十代
かつての宵御殿の“華”。
今では自分の座敷に引きこもり、特定の客としか会わない謎の多い陰間。
風見とは並んで名をはせていたが、今は関係に溝ができている。
人を引き付ける独特の雰囲気を持つ。
「俺に気に入られたいの?」
親父様
♂/???
本名・素性一切不明の宵御殿の楼主。
少年のような見た目をしている。
皮膚の病だとかで、肌を見せず人に触れられることを嫌う。
その一方であけっぴろげで気の良い性格で、宵御殿を見回る姿がよく見られる。
風見とは昔からの付き合いらしい。
「俺の城へ来たからにゃ、死ぬ気で働いてもらうぜ」
丹桜(におう)
♀/18歳
親父様に拾われて宵御殿へとやって来た。記憶をなくしているらしい。
下働きをしながら記憶を探る日々を送っている。
佳月の世話をすることが多いが、態度のきつい佳月に苦手意識を抱いている。
控えめで優柔不断な性格。
「なんで私、こんな目に…」
宇佐見 神輿(うさみ みこし)
♂/二十代
佳月の馴染み客の1人。
新進気鋭の小説家だが、心血そそいで書き上げた大作よりも小遣い稼ぎに書く春本の方が人気なのが悩み。
うつくしいものが好きで、皮肉屋な性格。
「まるで月とすっぽんだな」
五山(ござん)
江戸で大人気の天才からくり人形作家。
その作品は生きた人間と見分けがつかないと評判。
親父様とは古い知り合いらしい。
よもぎ (絵がある方)
五山の弟子。身の回りの世話をする。神輿の弟。
五山の使いでよく宵御殿へやってくる。